「金の鳥銀の鳥」




金の鳥 銀の鳥 青銅の神殿
真っ暗な夜の森、月の光は青白くてきっと銀色っぽく見えるだろう
金の鳥と銀の鳥はつがいで、森の奥深く、青銅の神殿に住んでいる
金の鳥は知識の鳥、何でも知っている
    青い砂漠がどこにあるか
    頭が九つある蛇のことも
    熱くない炎の燃やし方も知っている
銀の鳥は真実の鳥、真実を知っている
    真実は簡単には教えてもらえない
教えてもらう方法はただ一つ
    金の鳥が知らないことを聞くこと
     それは金の鳥、銀の鳥がいつ生まれたかということ
鳥はそれを知らないということさえ知らない


森は魔法がかかっていて、人は簡単に迷ってしまう
青銅の神殿に辿り着くなんて、できはしない
かかっている魔法はとてもいじわるで
入ったら最後出ることも出来ない

昼ならそこはただの森
ただの森のかわりに、鳥もいない
鳥に会いたいなら夜行くことだ

気をつけなければならないのは、月の姿と月の色
森の力の源は月だということをご存知か

行くのなら新しい生まれたての月の夜 細い月は力も弱い
もし月が青かったら、木は月の魔力をふるう事が出来ない
もし赤かったら・・・気を付けて 月は凶暴になっている
木に魔力を与え木は人を襲い、人は死んでも森を彷徨い続ける森の亡霊となる
だから青くて細い月の夜においきなさい


見つけなさい、青銅の笛
もしそれを持っていたら、それを吹いたら
音色が神殿と共鳴を起こすという
迷子の森で、迷わず神殿に行けるには、笛を吹くしかないのだから
帰り?
運よく神殿に辿り着けたら、金の鳥に出口を尋ねるといい

青銅の笛はどこにあるのだろう
世界にたった一本だけ、鳥の会うための笛はどこだろう
深い深い海の底に、大きな貝に抱かれている
世界の真ん中にある大きな木のてっぺんの、捨てられたカラスの巣の中にある


名を成したかった冒険者が幾千人
真実を求めた賢者たちが幾百人
鳥に会いたかった者が一人
鳥に会えたのはたった一人
幾千でもない幾百でもない一人
たった一人は今も誰にも名を知られていない

誰も知らない、月だけが知ってる物語





転載:2006.5.25
初出:2001.4.26 「EVER GREEN」


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