■あ行
【あ】足跡---ことば
やわらかい土のうえとか
降り積もった雪のうえとか
埃でいっぱいの倉庫だとか
やわらかく
ふりつもったものに
足跡が残る
やわらかく
降り積もった
時の流れに
足跡(わたし)を残す
足跡(わたし)を残すために
やわらかく
時よふりつもれ
【い】いのち---五行歌
友の父君が
亡くなったと聞いた
同じ日に
別の友に
子が生まれたと聞いた
【う】 打ち水---ことば
熱のこもる大地へと
温んだ水をぶちまける
熱を放つ大地から
陽炎が立ち昇る
放たれた歪み
定かならぬゆらめきは
大地が午睡の間に視た
うたかたの夢と知れず
人の夢も投影(うつ)した
大地の夢を呼びおこす
ひとしずくの
泡沫を呼ぶ打ち水(よびみず)
【え】 選ぶ---ことば
朝、家を出るときに
右足から出るか
左足から出るか
考えもせずに私の身体は選択んでいる
毎日の中で
するべきかせざるべきか
言うべきか言わざるべきか
私の心は選んでいる
時には時間切れになって
選べない、という選択肢まで引っ張り出して
日々、私は選んでいる
一瞬一瞬に選んで
時に負った時計に追われながら
どっちの足から歩き出すのかと同じくらいに
大事なことを選んで生きている
さあ
今日はどっちから歩き始めようか
私は毎日選んでいる
私は毎日
無意識のうちに
今日を生きることを選んでいるんだ
【お】音---五行歌
きらきらと光が
ひらひらと踊る
くるくると木漏れ日
瞼に感じる
光の音楽
■か行
■さ行
【さ】さびしんぼう---五行歌
寂しくないよ
哀しくないよ
泣いてないよ
うんわかってるよ
でも傍ににいるね
【し】少女人形---五行歌
穢れ無き白磁の面(おもて)と
深淵を映しこんだ硝子の眸(ひとみ)と
柔らかそうで不実な唇を持って
閉鎖(と)じこめられた時へと誘(いざな)う
永遠の少女人形(ロリィタ)
(おまけ:『少女人形』のできるまで)
【す】睡蓮---五行歌
あの日被っていた帽子のリボンの色と同じ
赤い花
白い花ばかりが咲く池に
ぽつりと一輪
水底(みなそこ)に少女は眠る
【せ】閃光---五行歌
暗闇を切り裂く閃光
文明(ひかり)を失った都会(まち)にふる
人はコマ送りで動き
視えない闇に頼りなく手を伸ばす
嵐の夜の停電
【そ】空音---ことば
空へと続く階段があったなら
どこまでものぼっていきたい
それは坂じゃいけないと思うの
だって空って、そんなに簡単に辿り付ける処じゃないと思うから
私はきっと途中で疲れてしまう
途中で段に腰掛けて休んでしまう
階段だったらそれができるでしょう
それに、空への途中ならそれもきっと楽しいと思うから
だからどこまでものぼっていきたい
一段、一段を踏みしめて
きっといつかたどり着ける空へ
■た行
■な行
■は行
■ま行
■や行
■ら行
■わ行
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