私的50音



あ行

【あ】足跡---ことば

やわらかい土のうえとか
降り積もった雪のうえとか
埃でいっぱいの倉庫だとか

やわらかく
ふりつもったものに
足跡が残る

やわらかく
降り積もった
時の流れに
足跡(わたし)を残す

足跡(わたし)を残すために
やわらかく
時よふりつもれ


【い】いのち---五行歌

友の父君が
亡くなったと聞いた
同じ日に
別の友に
子が生まれたと聞いた


【う】 打ち水---ことば

熱のこもる大地へと
温んだ水をぶちまける
熱を放つ大地から
陽炎が立ち昇る

放たれた歪み
定かならぬゆらめきは
大地が午睡の間に視た
うたかたの夢と知れず

人の夢も投影(うつ)した
大地の夢を呼びおこす

ひとしずくの
泡沫を呼ぶ打ち水(よびみず)


【え】 選ぶ---ことば

朝、家を出るときに
右足から出るか
左足から出るか
考えもせずに私の身体は選択んでいる

毎日の中で
するべきかせざるべきか
言うべきか言わざるべきか
私の心は選んでいる

時には時間切れになって
選べない、という選択肢まで引っ張り出して
日々、私は選んでいる

一瞬一瞬に選んで
時に負った時計に追われながら
どっちの足から歩き出すのかと同じくらいに
大事なことを選んで生きている

さあ
今日はどっちから歩き始めようか

私は毎日選んでいる
私は毎日
無意識のうちに

今日を生きることを選んでいるんだ


【お】音---五行歌

きらきらと光が
ひらひらと踊る
くるくると木漏れ日
瞼に感じる
光の音楽



か行


さ行

【さ】さびしんぼう---五行歌

寂しくないよ
哀しくないよ
泣いてないよ
うんわかってるよ
でも傍ににいるね


【し】少女人形---五行歌

穢れ無き白磁の面(おもて)と
深淵を映しこんだ硝子の眸(ひとみ)と
柔らかそうで不実な唇を持って
閉鎖(と)じこめられた時へと誘(いざな)う
永遠の少女人形(ロリィタ)


(おまけ:『少女人形』のできるまで


【す】睡蓮---五行歌

あの日被っていた帽子のリボンの色と同じ
赤い花
白い花ばかりが咲く池に
ぽつりと一輪
水底(みなそこ)に少女は眠る


【せ】閃光---五行歌

暗闇を切り裂く閃光
文明(ひかり)を失った都会(まち)にふる
人はコマ送りで動き
視えない闇に頼りなく手を伸ばす
嵐の夜の停電


【そ】空音---ことば

空へと続く階段があったなら
どこまでものぼっていきたい

それは坂じゃいけないと思うの
だって空って、そんなに簡単に辿り付ける処じゃないと思うから

私はきっと途中で疲れてしまう
途中で段に腰掛けて休んでしまう
階段だったらそれができるでしょう
それに、空への途中ならそれもきっと楽しいと思うから

だからどこまでものぼっていきたい
一段、一段を踏みしめて
きっといつかたどり着ける空へ



た行


な行


は行


ま行


や行


ら行


わ行





編集:2006.8.5
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